You are what you eat.
直訳すると「あなたは、あなたが食べるものでできている」。
これは、アメリカのことわざで「健康は食べ物で決まる」という意味です。
ジャンクフードばかり食べていれば、不健康まっしぐらですし、
栄養価の高いものを沢山食べていれば、健康診断も怖くありません。
しかし、働きながら、育児をしながら、3食全てきちんとしたものを食べるのは、現代日本では至難の業。
西原に小さなおにぎり屋があります。
そこは、まさにその「至難の業」を支えてくれるお店。
取材させて頂きました!
2020年1月にオープンした「一食(いっしょく)」さん。
和のテイストをベースにしたスタイリッシュな店構えです。
生成の暖簾にシンプルなアートと文字。ほっこり。
デザインはMiracle Deluxeの馬場さんによるものだそうです。
富ヶ谷新聞
こんにちは!
まずは、店内拝見します!
すみません、反射してしまって見づらいですが、
おにぎりとお惣菜のショーケースです。おにぎり、迷っちゃいますね。
お味噌汁もあります。
出汁にかつお節を使っていないので、ベジタリアンの方も大丈夫です。
お茶も置いてあります。
東京和茶房さんのお茶です。
(お茶を飲む。これは日本人の大事な文化です!東京和茶房さんで美味しいほうじ茶をいただいてきました!)
富ヶ谷新聞
オーナーの清澤さん、関西の方だと伺いました。
(当記者、兵庫県神戸市須磨区生まれ)
清澤さん
んー、引っ越しが多く「ここ出身!」というのはなくてですね。
滋賀に住んでいたこともあるし、大阪に住んでいたこともあるし、京都に住んでいたこともあります。
(ここで清澤さんの関西弁が解禁されました)
富ヶ谷新聞
そして、東京へ。
清澤さん
ええ、結婚してから東京に来まして。
飲食関連ではなく、全く別の仕事に就いていたんです。
子どもが生まれても働き続けていましたが、2人目の育休後、半年経ったぐらいですかね、
夫も忙しい時期で、2人の育児と、フルタイムの仕事で疲れ切ってすっかり気分が落ちてしまって。
私や夫の両親は関西にいるので頼れず。
夫も仕事がありますし。
あまりに落ちてしまって、ご飯が食べられなくなってしまったんです。
富ヶ谷新聞
それは大変!!!
仕事だけでも大変なのに、2児の育児、頭が下がります・・・
清澤さん
そこで、関西出身で東京在住の子どもを持つ友人に助けを求めたんです。
そうすると、ポストに紙袋が入っていたんです。
4人分の沢山の種類のおかずが沢山のタッパーに入ったものでした。
それを見たら食欲が湧いてきて、食べることができたんです。
「ああ、なんて美味しいんだろう」
と心から感動して、みるみる回復していったんです。
まさに、救いでした。
あれは忘れられません。
富ヶ谷新聞
育児されている方は、ご飯を作ってもらう機会は少ないですよね。
食は、そもそも人間が生きる上での重要なことですし。
清澤さん
そうなんです、食事がどれだけ大事か解りました。
その後、
「私だけでなく、東京にいる沢山の人は『砂漠』を抱えていて、しんどい思いをしているんじゃないか?」
と思い始めたんです。
そして、忙しい時はコンビニやファミレスで簡単に食事を済ませる方が多いと思いますが、
しんどい時こそ、手作りのものを食べるべきなんじゃないか、と。
富ヶ谷新聞
それが、「一食」さんの原点なんですね。
清澤さんの表現する「砂漠」という言葉が印象的でした。
疲労、心の荒み、孤独感、あてもなく彷徨い終わりが見えない感じ、
そういったものを現代の闇は砂漠そのものなのだと思います。
清澤さん
野菜がいっぱいで、味は濃すぎず、毎日安心して食べられるものを提供したいと考え始めました。
あれこれ調べて考えて、自分で作って販売するのがベスト、と考えたんです。
そこで、
「自分で作って提供できるのは・・・おにぎり!」
と、確信しました。
「どうぞ、召し上がれ」と差し出すサービスを強く思い描いていたので、
おにぎりは、サービスのイメージや実際の販売方法にぴったりだったんです。
富ヶ谷新聞
「どうぞ、召し上がれ」は両手で優しく差し出す感じですね。
おにぎり、ぴったりです!
お米は元気も出ますし、サイズ感も丁度です!
清澤さん
そもそも、店名の「一食」というのは、
「誰かの一食分でも支えられたら」
という思いから来ているんです。
自分が食で救われたように、誰かを食で救ってあげたいんです。
富ヶ谷新聞
先日食べた「かき菜のおひたし」、とても優しい味で葉の味も濃くて美味しかったです。
でも、「かき菜」は初めて聞いて初めて食べました。
淡い黄色の花が、これまた目にも美味しくて!
清澤さん
珍しい野菜ですよね。
うちは、野菜は代々木上原のMATELIAさんのオーナーさんが営むアビオファームさんのものを使っています。
abiofarm’s natural bar MATELIA
(サラダで満足できるかって?できるんです!パワーサラダ!!!MATELIAさんへ伺いました!)
清澤さん
自然栽培という、肥料や農薬を使わない栽培方法みたいです。
お店を始める前から、自宅へ野菜を配送してもらっていて、
お店でも使っています。
富ヶ谷新聞
地域密着型の経営ですね。
清澤さん
そうなんです、お米はこの西原商店会の柴田米店さんにお世話になっていますし、
この地元で消費していきたい、と思っています。
富ヶ谷新聞
個人的に、経木で包んで頂けるのは物凄くテンション上がります!
今は何でもプラスチック容器なので、温かみがありますよね。
清澤さん
テイクアウトすると、ゴミが沢山出て、罪悪感に苛まれるんです・・・
「ああ、買って食べちゃったな」とか、
「ああ、プラスチックゴミ増えたな」とか。
富ヶ谷新聞
家の中にゴミ増えると、あまりいい気はしませんよね。
捨てるの面倒ですし、何よりビジュアルでゲンナリしてしまいます。
清澤さん
ですよね。
なのでパッケージは非プラスチック系で、と決めてました。
経木は、ヒノキを薄ーく切ったもので、おにぎりにとても良いんです。
経木(きょうぎ・きょうぼく)を調べると、
「殺菌抗菌作用があり、通気性に優れ、調湿作用があり・・・云々」
と沢山の素晴らしい効果があるそうです。
そしてこの優しい佇まい。
昔ばなしに出てきそうな、ワクワクする包み紙です。
日本では大和時代から使われていたそうで。
令和の時代、経木で包むのは逆にトレンドなのではないかと思ったりする当記者。
ここで、一食さんのおにぎりとお惣菜を一部ご紹介します!
経木を開くと、こんな感じです。
これは「朝セット」で、1日限定10食!
おにぎり2つに、香の物が付きます。
ちなみに、この日は、
・鮭
・エゴマの葉の醤油漬け
のおにぎりに、紅くるり大根とかぶの柚子風味、です。
一食さんのおにぎりは、ふんわり握ってあって、程良い薄味です。
実家の母や、友達のお母さんのおにぎりを食べている錯覚に襲われます。
買って食べているのに、「おうち」の味がするんです。
沢山愛のこもった、優しい素朴なおにぎり。
こちらは、「おかずセット」です。
おにぎり2つに、唐揚げ2個と出汁巻きたまご1切れが付きます。
・青菜とじゃこ
・ツナマヨ
のおにぎりを選びました。
唐揚げが柔らかくて美味しい!
出汁巻きたまごもベストな塩加減です。
こちらは、「卵黄の醤油漬け」のおにぎり。
濃厚でクリーミーな卵黄にほんのり醤油の味付け。
贅沢な一品!
こちらは、
・鶏そぼろ
・ホタルイカの炊き込みご飯
のおにぎりです。
炊き込みご飯のおにぎりも、心が温まる一品。
お惣菜です。
右から、
・ブリのゴマ衣揚げ
・鶏肉の柚子胡椒照り焼き
・菊芋と人参のオリーブオイル炒め
です。
お惣菜も、「買ってきたお惣菜」の味がしないんです。
「おうち」の味がするんです。
安心感、そして丁寧に味付けされたお惣菜、とっても美味しくて、思わず人に分けてあげたくなります。
富ヶ谷新聞
「一食」さんの夢はなんですか。
清澤さん
もっともっと「誰か」の役に立つことです。
営業時間も延ばしたいですし、配達も考えています。
清澤さんの姿は、医療従事者のようでした。
「誰かを救いたい」。
それは、ご自身が辛い経験をしたからこそ強く持てる信念。
一食さんのおにぎりとお惣菜は、疲弊する現代人の心に沁み入る味でした。
子どもの頃の「美味しいモノ」はステーキやケーキのような、「お店」の味でした。
しかし、ある程度歳を重ねると、「美味しいモノ」は優しい味のおにぎりや手作りのごはん、
いわゆる「おうち」の味になってきます。
勿論、「お店」の味も手作りで美味しいのですが、
「おうち」の味は、肩肘張らずにリラックスして食べられて、時に懐かしさを覚えるものです。
辛い時は、誰かに頼っていいんです。
清澤さん、お忙しい中、本当にありがとうございました!
一食
住所 東京都渋谷区西原1-7-8 ツインパレスK1
電話番号/FAX 03-6873-9120
アクセス 代々木上原駅徒歩8分、幡ヶ谷駅徒歩8分
営業時間 8:30~17:00頃
定休日 土日祝日(お弁当、和菓子など別営業の日もあり)
Instagram 一食
取材/撮影/文:寺脇千草