相手の弱みにつけこむことを「足元を見る」と言いますよね。
昔、宿場などで、店主が旅人の足元を見て、たくさん汚れていると”これは疲れているだろうな・・・”と高い宿代を吹っ掛けたそうで、それでも旅人は疲れているのでやむなく承諾してしまう。というようなことから出来た言葉だそうです。
そう。弱点を作りたくなければ
良い靴を履くべきなんです!
まあなんせ、いい靴を履いていると仕事が出来そうに見えたり、センスのある人なんだろうなと思われたり、カッコいいですよね。
ということで、渋谷区の保養所に泊まろう!の旅行でご一緒した富ヶ谷不動産の中村さんが、弱点を減らすべく上原1丁目に出来たオーダーシューズのお店「eins-a Shoemaker Ota」(アインツアーシューメイカーオオタ)さんで靴を作ることになったという話を聞きつけた富ヶ谷新聞は、そんなことなら是が非でも取材させてくださいよ!と同行してまいりました!!!
自分の靴が出来るわけじゃないのに、なんかこういうのワクワクです!
富ヶ谷新聞的盛り上がりを見せる、水道通り商店街を抜け、井之頭通りを少し登ったところ。昔からこの辺に住んでらっしゃる方は、自転車屋さんがあった場所と言えば解るでしょうか。
New BalanceのM1400もとっても良いスニーカーですが、
今回は革靴作っちゃいましょう!
おじゃましまーす!
太田漠さん
いらっしゃいませ。取材ありがとうございます。
中村さん&富ヶ谷新聞
こちらこそ。よろしくお願いします!
eins-a Shoemaker Otaさんでのオーダーは、Made To Mesureという、サイズサンプルを履いてみて、不具合があった場合は、その木型にボリュームアップの修正を施して制作するというライン(Base Model:98,000円~+木型補正:5,000~30,000円)と、Full Scratch Orderという、木型を1から制作するライン(Base Model:120,000円~+木型製作:50,000円)があるそうです。
とても丁寧に説明してくれる太田さん。仕事も丁寧そうだなぁ。
中村さん
初めてのオーダーシューズなので、気合を入れてFull Scratchでお願いします!
富ヶ谷新聞
うお!並々ならぬ気合が溢れ出してますね!
太田さん
承知いたしました。ありがとうございます。まずはベースとなるモデルを選んでいただくのですが。
カッコいい☆☆☆
太田さん
基本的にはこの4つのラインから選んで頂きます。右から、ストレートチップで内羽根のもの。次にウイングチップで、これも内羽根ですね。次はプレーントゥで、外羽根になっています。一番左がUチップで、こちらも外羽根ですね。
富ヶ谷新聞
聞いたことの無い言葉がズラリと。。チップっていうのがつま先部分の形の名称で、羽根っていうのは甲の部分のパーツのことで、それが内側に縫い込まれていか、外に出ているかっていうことなんですね。
太田さん
そうですね。それぞれシーンやファッションに合わせて選んでいただくかたちになりますね。
中村さん
皆さん1足目って何を選ぶんですか?
太田さん
やっぱりストレートチップが多いですかね。冠婚葬祭どのシーンでも合わせられますので。ただ、少しかしこまってしまうので、カジュアルダウンしたい時などにはちょっと合わなかったりするのですが。
中村さん
じゃあストレートチップにします!
富ヶ谷新聞
はや!!!www
太田さん
承知いたしました。それではお色はどういたしますか?
中村さん
茶色、、、いや、黒です!黒!普通のツヤのある黒でお願いします!
富ヶ谷新聞
進行はや!
中村さん
ここはベーシックに!1足目なんでね!
太田さん
承知いたしました笑
富ヶ谷新聞
話の進みは早いですが、実際に靴が出来上がるのはいつ頃になるんでしょうか?
太田さん
今日、このまま採寸をさせていただきまして、そこから木型を作っていきます。木型数週間かかり、その木型から型紙を作りまして、仮の靴を作ります。
富ヶ谷新聞
仮で靴を1足作っちゃうんですか?
太田さん
そうですね。靴と言っても本当に仮でして。
こういった簡易的な靴が出来上がるのが2ヶ月後くらいになります。その靴で仮合わせをしていただき、不具合がないか確認させていただきます。そこで不具合が見つかれば修正させていただきますし、不具合が大きければもう一度仮の靴を作り直してフィッティングをし直す場合もありますね。
富ヶ谷新聞
なるほど。上手くいけばそのまま進行する訳ですね。
太田さん
そうですね。なので、スムースに進行して3ヶ月ほどと考えていただければと思います。
富ヶ谷新聞
やはりそれだけの時間がかかる作業なんですね。これは富ヶ谷新聞の記事も
三部作でいかせてもらいます!
目指せゴッドファーザー!と恐れ多いことをつぶやきつつ続けさせていただきます。
<第1作目は採寸から木型製作まで>
太田さん
このカルテに、足を乗せていただいて、採寸していきます。
富ヶ谷新聞
なるほど。そう言えば”カルテ”で思い出しましたけど、店名の「eins-a」ってドイツ語ですよね?
太田さん
おっしゃる通りです。僕は大学を出た後2年ほどドイツで靴作りの修行をしてまして。
富ヶ谷新聞
おお!ドイツ仕込み!
太田さん
まあ、しっかり基本から教えていただいた師匠は千駄ヶ谷にいるんですが。
富ヶ谷新聞
ドイツ→千駄ヶ谷→富ヶ谷という訳ですね。DST.
太田さん
DST?はい。。
富ヶ谷新聞
ドイツや、千駄ヶ谷で靴作りを学んだ話はまた聞かせていただくとして、採寸作業を見せていただけますか?
太田さん
はい。もちろんです。それではこの紙の上に座った状態で足を乗せてください。
中村さん
はい。言われたとおり革靴用の靴下持ってきましたー!
太田さん
ありがとうございます。ボールペンで足の形をとらせていただきますので失礼しますね。
太田さん
まっすぐで綺麗なお足ですね。
中村さん
本当ですか!?なんか嬉し恥ずかしだな。
富ヶ谷新聞
記事的にはちょっと変わった形くらいが盛り上がりそうなんですけどね笑
太田さん
土踏まずのカーブをとりますのでちょっとくすぐったいかもしれません。
太田さん
後は色々なポイントの幅や高さなどをチェックしていきます。
富ヶ谷新聞
これがベーシックな方法なんですか?
太田さん
いや、職人によって採寸方法も全然違いますね。もっと全然数値を取らない職人さんも多いですし、逆にもっともっと細かくとられる職人さんもいらっしゃいます。
富ヶ谷新聞
なるほど。オーダーシューズはこう作るといったルールはないんですね。
太田さん
そうですね。じゃあ中村さん、今度は立っていただいていいですか?
富ヶ谷新聞
立ち上がると自重で足の形が変わるからか!
太田さん
そうですね。中村さんの足、柔らかくて、立ち上がるとだいぶ形変わりますね。珍しいくらいです。
富ヶ谷新聞
お!記事としては盛り上がりますね!
中村さん
ええぇ、やめてよ~
ちょっと見にくいですが、黒い線が座った状態、赤い線が立った状態で測った土踏まずのライン。変わらない人は数ミリ程度というところ、中村さんの足は大きいところで1cm程度の変化が見られる。
中村さん
なんかコレ見られるのすごく恥ずかしい!なんでだろ?
富ヶ谷新聞
取材なので我慢してください!これはどういった対策をするのですか?
太田さん
そうですね、どちらの状態もカヴァーすることは出来ないので、ある程度間を取っていくことにはなります。他の部分との兼ね合いもあるので、そのあたりは経験も含めて形にしていきますね。
このような作業を左右の足で繰り返します。
足首と足の角度ももちろん人それぞれ。既製品の靴はまっすぐ作られているものの、やはりまっすぐな人は少ないらしいです。目で見て足の形を等高線のように書き込んでいく太田さんは急に画家のような顔になっていました。
こちらの測定器で足の全長を正確に測ってみると、いつも26cmの靴を履いている中村さんの足は25.1cmとのこと。
中村さん
え、そんなに小さいんだ。へえぇ。
富ヶ谷新聞
僕も基本26cmのスニーカー履いてるんですけど、測ってみていいですか!?
太田さん
もちろんですよ。
太田さん
24.8cmですね。
富ヶ谷新聞
うおお!恥ずかしい!
文字まで小さくなっちゃいました。別に見栄を張っていた訳ではないものの、本当のサイズを知ってとても恥ずかしかったです。
太田さん
身長もあって体格もいいので意外でしたね。
富ヶ谷新聞
僕も意外でした。。足の横幅があるから小さいサイズは履けないのかなぁ。いつか僕も靴作りに来ます!いつの日か!
寄り道はさておき、
中村さんのサイズの既製靴を履いてみて、足の当たる場所を確認して、
念のため写真も撮って採寸は終了。
モデルシューズを持ってパシャリ。3ヶ月後には、中村さんのためだけの1足を持って写真を撮りましょうね!
富ヶ谷新聞は日を改めて、木型の製作を見せてもらいに再訪しました。
工房にお邪魔させていただきました。やっぱり職人さんは自分の基地に居るときが一番カッコいいですね!
工房には大きな修理用の大きな機械も。eins-a Shoemaker Otaさんでは様々な靴の修理にも対応されていますので、お気軽に相談してみてください!修理内容にもよりますが、スニーカーも修理してくれたりするそうです!
富ヶ谷新聞
これから中村さんの木型を作るところなんですね?
太田さん
そうですね。
富ヶ谷新聞
基本的にはどういった作業になるんですか?
太田さん
元になる木型がありまして。まあ、木型と言っても実際には木ではないんですけどね。それを採寸したカルテと照らし合わせて足りないところを足したり削ったりして作っていきます。
中村さんの足、カルテをじっくり見ていて、やはりストレートではないなと感じてまして、左の木型からスタートしたいと思います。
富ヶ谷新聞
全然違いますね。ここから更に調整していくってことですが、粘土とかを使うんですか?
太田さん
いいえ。革を使いますね。革を貼って、また削ってを繰り返します。
上から見てみると、外側が足りないですよね。そこに革を足していきます。
富ヶ谷新聞
なるほど。実際に見せてもらえますか?
太田さん
もちろんです。まずは包丁研がせてください。
包丁!?
なんか急に意外なアイテム出てきた!
太田さん
まあ、西洋ではナイフを使うんですけど、日本ですと包丁を使いますね。
富ヶ谷新聞
何か違いがあるんですか?
太田さん
そうですねぇ。まあ、それほど違いはないのですが、包丁は”切る”で、ナイフは”裂く”というか。ドイツの職人さんとか、全然ナイフを研がないんですよね。研ぎ棒みたいなのにシャンシャンとこすって一丁上がりみたいな。
富ヶ谷新聞
ああ、映画で見たことありますね。
太田さん
あまり”切る”というところに重きを置いてないんですよね。むこうの職人さんは。
富ヶ谷新聞
日本刀と西洋剣の違いみたいなものですかね?日本刀は美しく”切る”けど、ソード、剣は”叩き割る”といった感覚の違いがあるというか。
太田さん
おっしゃる通りですね。日本に戻ってきて、やはり包丁の手入れの大切さが良くわかりました。包丁がしっかり切れないと良い靴はできないですね。
包丁と靴
全然関係のなさそうな2つのモノのつながりにドキドキ。
どの部分にどれほどの革を足すかを確認し、
革を足す部分を木型に書き込んでいく太田さん。
その形を革から切り出す。
木型との革が上手く馴染むよう、境目を削っていく。この作業でも包丁の切れ味は重要だ。
削りすぎず、削らなすぎないように厚さも調整していく。お見事です。
そんな感じで足していくんですね!
カメラ目線いただきました!
のりを塗って
熱を入れ
木型に貼り付けていく。
余分な部分を削り、
カルテと合わせて足りない部分、余分な部分がないか確かめていく。
この時点で、かなりカルテのラインと木型が合ってきているのが解る。
なんか感動です。
太田さん
後は黙々と貼って削ってを繰り返していくだけなので地味ですよ笑
富ヶ谷新聞
いや、横で観ているとワクワクドキドキなんですが!でも写真じゃなかなか伝わらないですね笑
太田さん
やっぱり靴作りで一番派手なのは、革を縫い合わせるところですかね。
富ヶ谷新聞
そのシーンはまだまだ先ということですね。それでは、職人気質な話にはなりましたが、
第一部 完!
eins-a Shoemaker Otaさん
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