富ヶ谷に住んで20年。そんな大先輩、樋口礼子さんと出会ったのはフカマルシェの打ち上げでのこと。
20年も富ヶ谷に!と色々お話を聞きたかったものの、席がちょっと遠くてその日はお話しできませんでした。日ごろからちょくちょく奥さんへのお土産に焼き菓子を買うこともあったACOTさんということで、これは取材にいっちゃおう!と連絡すると、快諾していただけました!
富ヶ谷新聞
よろしくお願いします!この間お話色々聞きたかったんですよー!
樋口さん
私もお話したかったんです!今日はありがとうございます。
富ヶ谷新聞
え!嬉しい!では、富ヶ谷のことを含めて色々お話聞かせてもらいながら、焼き菓子を作ってるところを取材させてください!
樋口さん
わかりました。じゃあ、看板商品の塩ケーキを作りますね。なにぶん焼き菓子は焼く時間がかかるので、たくさんはお見せできなくて。
富ヶ谷新聞
よろしくお願いします!
樋口さん
これが塩ケーキに使っているお塩で、フランスのゲランドの塩なんですが、その粗塩を使ってます。
富ヶ谷新聞
さっきすんなり流しちゃってましたが、ケーキに塩なんですよね?まずその発想はどうやって生まれたんですか?
樋口さん
2001年から2002年頃、レストランの立ち上げの仕事をしていて、メニューなどを考えていたのですが、ちょうどその頃、塩の販売が自由化されて世界中の塩が手に入るようになったんですね。それで、色々な塩を料理のメニューに試すうちに塩の美味しさや魅力にハマったんです。
富ヶ谷新聞
今でこそ色々な美味しい塩が手に入りやすい状況ですが、2002年ですか。17年前。。
樋口さんもう富ヶ谷に住んでますね!
樋口さん
そうですね笑 それで、ACOTを始めるときに、ケーキにも使ってみようと色々試してゲランドの塩にたどり着いて。バターと良く合うんです。それから、味だけでなく食感も楽しめるよう粗塩を使ってます。
富ヶ谷新聞
僕ね、何度もうかがわせていただいてるんですが、塩ケーキは食べたことなくて。楽しみ!!!
材料はこれだけ!シンプル!しかし、シンプルってことは、素材がダイレクトに味につながってくるってことですよね。
樋口さん
小麦粉は地粉を使ってます。中力粉になりますね。
富ヶ谷新聞
地粉??門外漢でして。。説明お願いできますか?
樋口さん
地粉は地元で収穫、製粉された国産小麦粉のことをそう呼ぶんです。普通焼き菓子には薄力粉を使うんですが、このケーキには中力粉を使っています。うどんなどに使う小麦で、ケーキに使ってるところはほとんどないんじゃないかな?
富ヶ谷新聞
なぜ中力粉を選んだのですか?
樋口さん
色々理由はあるのですが、やっぱり一番は旨味が強くて美味しいからですね。焼くのは難しいのですが、他の粉では出ない独特の食感もありますね。
富ヶ谷新聞
そのあたりがACOTさんのオリジナリティということですね!食べるの楽しみ!
樋口さん
もう一つ、体と環境のために「まるごと使う」ホールフードっていう考え方があるんですね。そういう意味でも精製度の低い中力粉を使いたいというのもあります。そうなってくると、ポストハーベスト(収穫後の農産物に使用する殺菌剤、防かび剤などのこと。日本では使用が禁止されている)の問題もあって、やはり国産のものを使いたいなと。
富ヶ谷新聞
とても考えられて材料を選んでらっしゃるんですね。環境のことも考える。大切なことですよね。砂糖も普通の白いお砂糖とは違いますね。
樋口さん
これは洗双糖というお砂糖になります。製造工程で精製をしていないので、ミネラルをたっぷり含んでいるんです。その分サトウキビの香りや味も残っていて、扱いにくくはあるのですが、栄養面や、ホールフードの考えからもこのお砂糖を選んでます。
富ヶ谷新聞
ほんとだ!結構香りがありますね。
樋口さん
あとは、よつ葉バターと、平飼いの卵ですね。
富ヶ谷新聞
うん。シンプル。けどしっかりと選ばれた材料たちだっていうのはよく解りました!
丁寧に丁寧に、様子を見ながら少しずつ材料を混ぜていきます。バターの攪拌具合一つとっても焼き上がりに大きく影響が出るそう。
富ヶ谷新聞
卵はお湯で温めながらかき混ぜてるんですね?
樋口さん
そうです。材料がシンプルなので、例えば地粉の出来が年によって変わるだけで焼き上がりにすごく影響が出るんですね。うちで使っている材料は、製菓用に調整されたものではないので、その状態によって粉をブレンドしたり、分量を変えてみたり、攪拌具合を調整したりと工夫が必要になってくるんです。卵を温めながら混ぜるのも、パウンドケーキでは普通やらない手法なのですが、昨年あたりの焼き上がりが上手くいかなくなって困ってしまっていたときに見つけた解決法なんです。
富ヶ谷新聞
「混ぜる→焼く」という工程もシンプルなだけに、ちょっとしたことで焼き上がりが変わっちゃうんですね。こりゃ大変だ!
攪拌しすぎるとグルテンが出すぎて食感が固くなってしまうんだそう。「混ぜる」という工程がこんなに大切な作業だとは思ってもみませんでした。
生地をカップに入れて、仕上げにゲランドの粗塩を振りかけます。このお塩は溶けきらずに食感が残ります。どんな感じになるんでしょう!
そしてオーブンの中へ。ワクワク。
途中一度取り出し、真ん中に切れ目を入れます。
富ヶ谷新聞
もうね、めちゃくちゃいい匂い!これ焼いてるときに出くわしたら確実に焼き上がり待ちますね!
樋口さん
本当はね、ちょっと冷めたくらいが、味が落ち着いて食べごろなんですけど、焼き立て食べたい!って人も多くて。タイミングが合えば焼き立てをお出ししてますよ。
ということで、もう少し焼いて。。
完成!!!
樋口さん
焼き立てで1つ食べてみますか?
富ヶ谷新聞
もちろんです!いただきます!
きゃー!参った!
いただきます!
ごちそうさま!!!!!
富ヶ谷新聞
粉が美味しいっていう意味が解りましたよ!本当に卵、小麦粉、バター、砂糖から出来てるなって味なんだけど、主たる粉がその美味しさをまとめてる!そして「塩」!!!最後に振りかけた分が、カリカリっとした歯ごたえと共に、絶妙な塩味を与えてくれて、甘みも引き立つし、それ以前に塩として美味しいです!生地に溶け込んだ塩味も絶妙です!洗双糖の風味も活きてるなぁ。ああ、美味しい。
樋口さん
ありがとうございます!
富ヶ谷新聞
樋口さん、あと、端っこの焼き加減めちゃ好きです!端っこ最高!
樋口さん
美味しいですよね。私も端っこ大好きです!
この後、お土産に塩ケーキを買って帰ったのですが、落ち着いた味もとっても美味しかったです。
少し涼しくなってきた午後に、お気に入りの紅茶を入れて、ちょっと贅沢に塩ケーキを楽しむ。
これ、本当におすすめです!
インターネット黎明期に始めた焼き菓子のネット販売の話、20年前から今までの富ヶ谷の街の話、塩ケーキの他にもたくさんのおすすめ焼き菓子がある話などなど、色々聞かせていただいたのですが、この記事はこのあたりでおなかいっぱいかなというところなので、ぜひ店頭で、焼き菓子を選びながら樋口さんに話かけてみてください。 とても気さくな方なので、色々教えてくれると思いますよ!
もうすぐ10周年を迎えるACOTさん。こんな素敵な焼き菓子屋さんがある富ヶ谷がまた好きになりました。多くの人にACOTさんの美味しい焼き菓子が届きますように!
ACOT
渋谷区富ヶ谷1-52-10ハーモニーハウス代々木公園2F
毎週月曜日 ゆるっとマンデーOPEN(仕込みをしながらお店もオープンしています)
毎週木・金・土曜日 11:30〜19:00
月3回、日曜営業(ハッピーサンデーOPEN 11:00〜16:30)も実施しています。
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