6月、梅雨の季節です。
雨で湿度は100%、じめーっとした暑さが体に纏わりつく時期。
そんな時、心と体がジワジワと欲してくるのは・・・
ビール?いえいえ、
素麺?違います、
アイスです。
代々木公園の青々とした緑を見ながら、さっぱりと冷たい自家製ジェラートを食べられるという、
目にも舌にも優しいお店、fun.ice!(ファンアイス)さんを取材させて頂きました。
シンプルでスタイリッシュなアイス屋さん。
5/12が1周年でしたので、お祝いのお花がありました。
なお、向かって右の黒いドアは個人宅のドアなのでご注意下さい。
入るとすぐにアイスの宝箱・・・ではなく、ショーケースがお出迎え。
お持ち帰りもできますよ。
取材日のラインナップです。
いつまでも眺めていられます。幸せ・・・
向かって左側がミルク系、右側がソルベ(シャーベット)系です。
ん?
んんん?
ぐ、ぐ、グレープフルーツがあるっ・・・!!!
取材前にグレープフルーツのソルベに目が釘付けの当記者(柑橘系ソルベ大好き)。
グレープフルーツ・・・これは美味しそう!いや絶対美味しい!
太田さん
このグレープフルーツは国産で、鹿児島の無農薬のものなんです。
昨年の9月30日に九州を襲った台風で、落ちてしまったグレープフルーツを買い取って、
ソルベにして出していましたが、その時は実が青かったんですね。
今回のものは生き残った、生命力のある完熟した実を使っています。
富ヶ谷新聞
食べると長生きしそうですね・・・
そういえば先日、「グレープフルーツを知らない若い人」がいるという記事を読みまして。
フルーツに、より甘味を求める世間の流れの影響で、
グレープフルーツの購買量や消費量が激減しているとか・・・
武山さん
消費者がより甘いものを求めるので、柑橘農家さんも甘さを強くすることに苦労されているそうです。
突如、取材を始めてしまったことに気が付く当記者。
富ヶ谷新聞
ええと、取り乱してしまい、大変失礼致しました・・・
改めて、富ヶ谷新聞の寺脇と申します。
まず、以前名刺を頂いたので、「太田夫妻」ということでよろしいでしょうか。
太田さん
あ、私は旧姓で仕事をしているので、戸籍上は武山姓ですが「太田」です。
奥様の太田さんは栄養士・産業カウンセラーを活かした心と体の専門家としての顔もお持ちです。
ご夫婦ですが、別姓でそれぞれお仕事をされています。
左側が武山さん、右側が太田さんです。
可愛らしいほっこりご夫婦です。
富ヶ谷新聞
それでは、ジェラート屋さんを始めたきっかけは何でしょうか。
太田さん
武山が定年退職を迎えるにあたって、「この先どうしよう」と考えていたんです。
元々武山は料理が大好きで、「飲食店をやりたい」という話だったのですが、私が栄養士ゆえに飲食店を経営している知り合いが多く、飲食店の経営がとても大変であることはよく聞かされていたので初めは反対でした。
富ヶ谷新聞
食材が余ってしまったり、経営等も大変そうですからね・・・
分かります。
太田さん
ですが、ジェラート店を経営している友人の話を思い出して、
「市場に流通しない規格外のフルーツ等の廃棄されてしまう食品をジェラートにすることで資源を活用できる!そこから『食育』というと固いかもしれませんが、食の大切さを伝えられる!」
と考えて始めました。
ここで当記者、「食育」という言葉に、ぴくっと反応。
最近よく耳にする「食育」。
何をどうやって伝えることなんだろう・・・
ここで太田さんが当記者の戸惑いを汲み取って下さった様子。
太田さん
例えば「オーガニック」「無農薬」が良いとされがちですが、言葉だけが独り歩きしている感じがします。
フルーツは害虫対策のために農薬を使うことが多くなりがちなのですが、
農薬を減らすために沢山の農家さんが努力されています。
武山さん
例えば、苺だったら、苺にとっての害虫を餌とする虫を放つんです。
そうして農薬使用を抑えたりします。
太田さん
オーガニック認証を取る等には様々な基準があります。
そして、「無農薬」に近いフルーツを育てている農家さんは沢山いらっしゃいます。
ですが、一度市場に出てしまうと、彼らの農薬削減の努力は何も伝わらず「農薬使用のフルーツ」というカテゴリーで一括りにされてしまいます。
私達は、お客様とジェラートを通じてコミュニケートすることで、その「努力の過程」を伝えることができます。
なるほど、具体的な説明があるととても分かりやすいです!
「無農薬」という”ブランド”に沢山の農家さんが努力されているとは知りませんでした。
何だか恥ずかしい・・・
太田さん
無農薬のような難しいお話は大人の方にお伝えしていて、こども達にはジェラートを通して「フルーツの良さ」をお伝えしています。
武山さん
うちは、グラニュー糖等の白砂糖を使わずに、「アガベシロップ」等を使って甘味を出しています。
アガベシロップは、砂糖の1.3倍の甘味があるんですよ。
富ヶ谷新聞
アガベ・・・とは?
武山さん
「竜舌蘭(りゅうぜつらん)」という多肉植物ですね。
根茎を蒸して搾汁したものがアガベシロップです。
ちなみに、その搾汁したものを発酵させて蒸留したものがテキーラになります。
富ヶ谷新聞
てっ、テキーラ!?
武山さん
不思議ですよね。
テキーラのボトルによく描かれている植物がアガベなんですよ。
太田さん
これは、東京で採れた農林水産物を東京で消費するという「地産地消」を推進するために東京産の食材を積極的に使用している都内飲食店が審査を受け、登録されるものです。
うちでは八王子市の磯沼ミルクファームさんで採れたミルクを使った「プレミアムミルク」というジェラートを作っているので。
富ヶ谷新聞
えっ、都内に牧場ってあるんですか!?
太田さん
あるんですよー。
牛がのびのびしていて、ほとんど鳴かないんです。
牛が「モー」と鳴くのは、空腹や自身の危険を察して周りに訴えている印なんですって。
だからか、牧場を訪問した時に最初だけ「モー」と鳴かれました。
富ヶ谷新聞
牛って、何となく鳴いているんじゃなかったんですね・・・
太田さん
そうなんです。
磯沼ミルクファームさんでは、牛も人と同じように考えていらっしゃいます。
ストレスのない牛からは、やはり良質なミルクが採れるそうですよ。
当店のアイスや牧場の話をきっかけに磯沼ミルクファームさんへ行かれたお客様もいらっしゃいます。
富ヶ谷新聞
加工品から、原材料を知ったり触れたりするのって、素敵ですね!
アイスだと、形が分からなくなっちゃいますから。
太田さん
例えばお子様を連れてスーパーに行ったときに、
「あ、これはこの前アイスで食べたフルーツだよ」
と食材の本当の形を見たり、実際に買って食べる事も、立派な食育です。
あれ、食育って、もっと敷居の高いものだと思っていましたが・・・
食育って、何だか面白い!
太田さん
苺の旬はいつだかご存じですか。
富ヶ谷新聞
えっ、えっと、・・・春ですっ。
太田さん
正解です!
でも最近の一部のこども達や、時に大人の方も「苺の旬は冬」と思ってたりするんですよ。
富ヶ谷新聞
冬?何でまた冬なんでしょうか。
武山さん
クリスマスになると苺を使ったケーキが出回りますよね。
富ヶ谷新聞
!?
(驚きと衝撃で絶句の当記者)
太田さん
苺はハウス栽培ができるので、需要に合わせて作られています。
ですが本来の旬が分からなくなるというのも・・・
現代では技術が進み、冬場にスイカを、夏場に温州みかんを食べられるようになりました。
旬に関係なく需要に沿った供給ができる、というのは経済においては重要なことかもしれません。
ただ、旬を知ることで季節を感じたり、旬ならではの高い栄養素を摂ったり学んだり、というような、
日本の昔からの「情緒」が失われてしまったように感じます。
fun.ice!さんでは、「旬」にこだわったフルーツを使っています。
太田さん
アイスって、凄い食べ物なんですよ。
原材料が多彩なので、どんなものを使っているのか、どこのものを使っているのか、
旬はいつなのか、どのあたりで育てられることが多いのか、沢山伝えることができます。
先程のグレープフルーツの説明で、「あの台風は被害が大きかったんだ」「そこに住む方々は大変だったんだ」と、日本の広さ・災害の恐ろしさもお伝えすることもできます。
そもそもアイス自体は柔らかく甘いので、こどもからお年寄りまで安心して食べられます。
一つのアイスで老若男女が簡単にコミュニケートできるんですね。
富ヶ谷新聞
アイスは情報源でもあり、意思疎通のツールでもある・・・
「教材」と言っても過言ではないですね!
では、待ちに待った実食のお時間でございます。
まずは、不知火(しらぬい)とグレープフルーツをお願いします!
左が不知火、右がグレープフルーツです。
不知火は、デコポンの名で知られています。
不知火を口に含むと、んんん?デコポンをそのまま食べている感覚に襲われます!
でも、食べているのはアイス。
デコポンの果汁が濃く使われていて、非常に驚きました。
私が食べているのは・・・デコポン?アイス?
甘味と酸味のバランスがデコポンそのものなのです。
そして、ドキドキしながらグレープフルーツを頂きます。
甘味と酸味の中に程良い苦みがあって、これまたグレープフルーツをそのまま食べているかのような・・・
続いて、とちおとめとパッションフルーツをお願いします!
左がパッションフルーツ、右がとちおとめです。
とちおとめとパッションフルーツの味は当然ながら、食感も違っていて楽しいです。
とちおとめは、しっとりとして粒子が細かいイメージで、
パッションフルーツは、さっぱりとしていて瑞々しいイメージです。
「美味しい」という言葉が陳腐に思えてしまうほどの、極上のアイスです!
こんな風に、店内やベンチで代々木公園の豊かな緑を見ながら、
「美味しい」を超える美味しさのアイスが頂けます。
ああ、幸せ・・・
定番フレーバーは、
・プレミアムミルク
・ベーシックミルク
・抹茶
・ピスタチオ
・ミルクチョコレート
・なつめ
・パッションフルーツ(ソルベ)
となっており、ソルベは季節のフレーバーを数種類用意されています。
人工的な乳化剤や安定剤は不使用とのことです!
私が小中学生の頃、母にデコポンやグレープフルーツを剥いてもらった記憶が蘇りました。
母が皮を剥いている時の爽やかな柑橘の香り、
瑞々しい果汁が噛む度に口の中で広がる果実、
素直に「美味しい」と感じた記憶。
あれは、まさしく「素材の味」であり、そして「母の愛」でした。
まさか、アイスでこれほどノスタルジーに浸るとは思いませんでした。
食の記憶、それは、その人が生きてきた道の記憶。
美味しいものを食べた記憶は、その人の人生を鮮やかに彩るものだと思うのです。
太田さん、武山さん、お忙しい中、本当にありがとうございました!
fun.ice!(ファンアイス)
住所 東京都渋谷区代々木5-64-4 1F
TEL 080-4342-1522
アクセス 代々木八幡駅徒歩6分 代々木公園駅徒歩6分
営業時間 12:00〜19:00 (季節によって営業時間が異なります)
定休日 不定休
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取材/撮影/文:寺脇千草