大手セレクトショップを始め、全国的にそのクオリティが認知され始めているアパレルブランド、Handroomの本拠地が富ヶ谷エリアにあるとのことで、この街を拠点に活動する同ブランドのパタンナー兼デザイナーを務めるEveryman Inc.取締役岡田安彦さんにお話をうかがってきました!
代々木八幡駅にほど近い、岡田さんのオフィスにお邪魔したこの日は、秋冬の新作の展示会のフレンズデーでした。シンプルで清潔感のある印象の服がオフィスにずらりと並ぶのを眺めながら、早速お話を聞いてみることに。
■Handroomのルーツ
ちょうどメンズファッションのメディアが一般的になってきた90年代後半頃、高校生だった岡田さんは、それまで全く興味のなかった服に興味を持つようになったのだそう。それをきっかけに、デザイナーを目指して服飾系の学校へ進学したそうです。ところが、最初に就職した会社では、パターンの仕事ばかり。業界のことも知らないまま、来る日も来る日もパターンの仕事に追われているうちに、いつしかパターンの魅力に気づき、それが今につながっていると言います。
元々メンズの企画、パターンを手掛けるというところがHandroomのルーツ。国内の生地を扱う企業や工場と一緒に服作りをしているうちに、もっとより良い服を作ってみたいと思うようになったのだそうです。
ブランドとしては、デザインに特化したものというよりは、日常で着るベーシックなアイテムを中心に、まずは岡田さんが得意とするシャツとデニムからスタート。現在3年目を迎え、少しずつラインが広がってきているそうです。
「日常的に使うものだから、5年10年着続けられるものを生み出したいと考えています。そのために縫製やパターン、素材にこだわって、シンプルだけど、「今日は何を着ようかな」と思った時に、パッと手に取ったのがHandroomだったみたいな、そういうものを目指しています。ベースのシャツとしてHandroomのものを着てみて、そのシャツに他のお気に入りのブランドのものを合わせたり、柔軟性のある自由な楽しみ方をしてほしい。奇抜だったり目立つデザインの服ではないけれど、ベーシックなものだからこそ、良い素材と機能性を意識しています。使っていくうちに愛着が湧いてきて、気づいたら使用頻度が一番高かった。そんなブランドを目指しています。」と、岡田さん。
展示されているシャツを一枚一枚よく見てみると、どれもシルエットがとてもきれいです。目についたのはボタンホール。とても丁寧に作られていることが素人目にもわかります。
この日、撮影に協力してくださったフォトグラファーの杉本さんもHandroomのシャツを着ていたことに気づき、ちょっと調子に乗って、展示されていたコートも着てもらっちゃいました!
■妥協なきジャパン・クオリティ!Handroomのこだわりは日常に生きる!
「国内でモノ作りをしたい!」
この情熱がHandroomを日々進化させています。オフィスに並ぶ服をよく見てみると、細部にこそそのこだわりが生きていて、しっかり丁寧に作られていることが素人である私にもわかりました。カジュアルにもフォーマルにも使えるものが多い印象。シーンにとらわれない着こなしも意識しているのだとか。
Handroomのディテールへのこだわりは、まさに日常のヒトコマに生きているのだと感じました。ボタンホール一つとっても、手間のかかる方法で作っていることで、糸がほつれにくかったり、ジッパーもスムーズに動いたり、ストレスを感じることがほぼないのだそう。しかし、人間って「良いこと」「気持ちいいこと」には気づきにくいし、何も感じない。何も気になることがないからそれを当たり前だと思ってしまうんですよね。一方で、「嫌なこと」「気になること」「気持ち悪いこと」などネガティブな要素には不快感を持つから気づいてしまう。
特に服など日常で使うものってダメなところに気づきやすいのではないでしょうか。例えばハサミなどもそうだけど、何気なく使うものは機能性の悪さなど、ストレスを感じることで気づいてしまう。だからこそ、Handroomが目指す、長く着続けられるクオリティは、意識的に気づかれることはないかもしれないけど、結果的に「長く着続けられる」ところに行きつくことになるのだろうと思います。
岡田さん
「確かに、お米とかも良質なお水を使って、誰がどこでどんな風に作ったか知らなくても、食べてみて「めちゃめちゃうまい!」っていうことしか感じないことが多いっていうのと似てるかもしれませんね!(笑)」
「気づいたら着続けてた」ということが、こだわりに対する消費者の評価であり、ブランドが目指すものの結果なのでしょう。
コートひとつとってみても、とんでもなく手間のかかる製法技術を持つジャケット専門の国内工場に依頼していたり、ニットをつなげるのもミシンではなく編んでつなげるリンキングという技術を持った国内の企業に依頼しているそうです。依頼する工場も、ジャケットならジャケットだけなど、専門的なところが多く、総合的に何でもできるようなところには依頼しないという徹底ぶり。その理由は、どこでどんな風に何を作っているか見えなくなってしまうからだそうです。
■シンプルなテイストながらブランドが進化し続ける理由
岡田さん
「大手のブランドやファストファッションなど、幅広い仕事をしているからこそ視野が広がって、本当に自分が求めることへの説得力が増すんです!」
深い!!!!!
パリコレにも出ているようなコレクションブランドからファストファッションまで、求められるものも、ターゲットも性質も全く異なる様々な仕事を手掛けてきているという岡田さん。幅広いテイストの仕事を普段から手掛けることで、世間の流行やデザイン性など、多くの情報をつかむことができる。そこから自分の求めるもの、Handroomに活かせるものに向かってどんどん磨き上げていくことで不要なものをそぎ落とす。その過程で理想を実現するために必要なものが見えてくる。それが素材だったり、縫製だったり、そういうことなのかなと私は理解しました。
「大手のブランドやファストファッションなどの量産系の仕事だと、いろんな制約が生じてくるんです。大きなところで言うとコスト。コストありきで予算内でできることをしようという仕事がほとんど。だけど、Handroomでは、コストよりもクオリティ。良いものだけを使いたい。厳選した素材を使って腕のある職人さん、技術のある企業、工場と仕事をしているうちに、どんどんシンプルなものに行きついてきちゃいました!」
そんな風に笑顔で嬉しそうに生き生きと岡田さんは語ってくれました。
それってきっと、岡田さん自身の感覚も含めて、ブランド自体も洗練されてきてるってことですよね?日々様々な経験、目にしたもの、手にしたものからの学びを活かしてブランドを育てている感覚。ヴィンテージの手法を現代に合うようにアレンジしてみたり、古着の作りを分析してパターンに反映してみたり、ブランドの特徴であるポケットのデザインには、パタンナーならではの遊びも入れていたりと、実験的かつクリエイティブな試みに日々挑んでいるようです。岡田さんが経験したもの全てが岡田さんというフィルターを通して、Handroomの服となって生まれ変わっているのですね!
■これから岡田さんがHandroomとともに目指すところは!?
「今後は海外展開も視野に入れています。実際海外からも問い合わせが増えてきているので、日本のクオリティをどんどん売り出していきたい。」
Handroomでは、今秋から新たにレディースラインHandroom Women’sも登場します。島根県にあるセレクトショップ『Daja』のディレクターであり、着こなし術などの著書も多い、ファッション業界では著名な板倉直子さんをディレクターに迎え、メンズ専門ブランドならではのノウハウを活かした新しいデザインを展開していくとのこと。ますます楽しみです!
個人的に気になったのが奥のコート。これは、フランスの古着、作業着にインスパイアされてアレンジしたものなのだとか。
物腰やわらかい印象からは想像もつかない日本人特有の職人気質を持ち合わせる岡田さん。これからもどんどんジャパンクオリティを世の中に広めてくれそうです。
岡田さん、ありがとうございました!
Handroom取り扱いショップリストはこちら
http://handroom.jp/shop/
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撮影協力:杉本篤哉
取材/文 hazuki